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これから会社を設立して貨物利用運送事業のライセンスを取得したいと考えています。貨物利用運送事業を行うためには、定款の事業目的にどのような文言を記載すればよいのでしょうか。
貨物利用運送事業を行う会社の定款の事業目的は、「貨物利用運送事業」と記載しましょう。
事業目的については、事業者の方から「この事業目的で大丈夫?」とご質問を受けることもありますし、一方で事前のチェック項目から抜け落ちてしまっていて、私たちのところにご相談に見えてから「このままでは許可(登録)が出ません」とお伝えすることもあります。
まずは正確な解説のために、法律で貨物利用運送事業がどう定義されているかを確認しておきます。わかりにくい法律の条文ですし、読み飛ばしていただいても、特に記事の理解に不足はありません。
貨物利用運送事業というのは、法律で、
貨物利用運送事業とは、第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業
であると規定されております。
そして、第一種貨物利用運送事業は、
他人の需要に応じ、有償で、利用運送を行う事業であって、第二種貨物利用運送事業以外のもの
と規定されております。
次に、第二種貨物利用運送事業は、
他人の需要に応じ、有償で、船舶運航事業者、航空運送事業者又は鉄道運送事業者の行う運送に係る利用運送と当該利用運送に先行し及び後続する当該利用運送に係る貨物の集貨及び配達のためにする自動車(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項の自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)をいう。)による運送(貨物自動車運送事業者の行う運送に係る利用運送を含む。)とを一貫して行う事業である
と規定されています。
参考:貨物利用運送事業法
結論から言えば、貨物利用運送事業を行う会社の定款上の事業目的は、「貨物利用運送事業」と記載すれば十分です。
なお、定款の事業目的に「第一種貨物利用運送事業」や「第二種貨物利用運送事業」と記載される事業者さんもいらっしゃいます。
この記載は間違いではありませんが、例えば「第一種貨物利用運送事業」とだけ事業目的に記載している事業者さんが、第二種貨物利用運送事業の許可を取得するときは、許可申請に先立って、株主総会を開催して事業目的変更(追加)を行う必要が生じてしまいます。
そのため、単に「貨物利用運送事業」と記載しておく、もしくは「第一種貨物利用運送事業」と「第二種貨物利用運送事業」の両方を記載しておくほうが幅広く対応できます。
事業目的に「貨物利用運送事業」という記載があれば迷うことはないのですが、以下に紹介するような事業目的の場合、「これで許可(登録)できる?」とご相談を受けることがあります。
原則として「貨物利用運送事業」以外の事業目的の記載法では、貨物利用運送事業の許可・登録はできません。
申請先によっては、「次回の株主総会において定款の事業目的に貨物利用運送事業を追加する決議をし、会社登記簿へ登記する」という内容の宣誓書を差し入れることで、申請自体は受け付けてもらえることもあるのですが、事業目的の追加・変更には株主総会決議が必要になるため、規模の大きな会社ではそう簡単にいかないこともあり、事前調整が大切です。
事業目的を「物流事業」とした場合はどうでしょうか。
この記載では、物流事業の具体的な内容(運送なのか、保管なのか、あるいは管理業務なのか)が不明確で、どのような業務を行うのかが分かりにくいと判断されます。
「輸送サービス」「運送業」とだけ記載した場合は、貨物運送なのか旅客運送なのか、実運送なのか利用運送なのか事業内容は曖昧になってしまうので、貨物利用運送事業の事業目的として相応しくないと言えるでしょう。
定款の事業目的に「3PL事業」と記載した場合を検討してみましょう。
3PL事業(サードパーティロジスティクス事業)は、物流のアウトソーシングサービス全般を指しますが内容が幅広いです。
貨物の輸送は、実運送の場合と貨物利用運送の場合のどちらもあります。したがって、「3PL事業」は貨物利用運送事業の事業目的としては適さないでしょう。
「貨物取次事業」は、荷主に対して運送責任を負うものではなく、
荷主の需要に応じ、有償で、自己の名をもってする運送事業者の行う貨物の運送の取次ぎ若しくは運送貨物の運送事業者からの受取(運送の取次ぎ)又は荷主の名をもってする運送事業者への貨物の運送の委託若しくは運送貨物の運送事業者からの受取り(運送の代弁)を行う事業
のことを指します
一方で、貨物利用運送事業は、荷主に対して運送責任を負う事業ですので、全く別の事業になってしまいます。
なお、貨物取次事業は、2003年に規制が廃止されています。
貨物利用運送事業は、2003年4月1日に貨物利用運送事業法が施行されるまでは、貨物運送取扱事業法を根拠法令としていました。貨物運送取扱事業法では、貨物取扱事業は、利用運送事業と運送取次事業の両方が含まれる事業でした。
2003年3月31日までに設立された法人が貨物利用運送事業へ参入する場合は、事業目的が「貨物取扱事業」となっていることは、旧法時代の事業内容の記載が残っていると判断するため全く問題ございません。
しかしながら、すでに貨物利用運送事業を経営されている会社の事業目的を参考にしながら新設法人の事業目的を検討するケースで、旧法時代の事業目的の表現をそのまま流用して「貨物取扱事業」と記載してしまうことがよく起こります。
また、貨物運送取扱事業法が旧法となり、貨物利用運送事業法が運用されている現在に、あえて旧法時代の事業内容を事業目的とするのは、手続きの中で事業目的の追加もしくは修正が必要になる可能性が高いですし、わかっている人から見れば古い会社の事業目的を転用したことが一目瞭然になってしまうため、避けた方がよいと考えます。
会社を設立する際に社歴のある会社の事業目的を参考にする場合は、「貨物取扱事業」は「貨物利用運送事業」に修正して記載するのがよいでしょう。
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